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◎第3回 釧路コールマイン 元仕繰係長 和田道正さん(55)
意外にも学歴と資格が求められた職場
わたしが旧太平洋炭鉱に入社したのは昭和51年、27才の時でした。
それまでは、中学を出てから大工仕事などをしていたので、
腕に多少の自信もありましたし、炭鉱ならば学歴に関係のない
実力勝負の世界だろうと思って飛び込んだのですが、
すぐに大きな間違いだったと気づきました。
電気や機械、さまざまな危険作業などが多い炭鉱という職場は、
何をするにも資格が求められる世界だったのです。
わたしが配属されたのは「仕繰り」と呼ばれる部署で、
ここは主に掘り進んだ坑道の維持と補修を行うところでした。
海底下数百メートルにある坑道には、1平方センチ当たり
何トンもの圧力がかかるため、頑丈な鉄枠で坑道を支えていても、
それを押し曲げながら天井が下がってくるのです。
これらの作業を指揮するには当時「鉱山保安補」という資格が
必要だったのですが、そのためには年齢に関係なく高卒で3年以上、
中卒ならば5年以上の現場経験が必要と決められていました。
当時はわたしも若かったため「こんな仕事になぜ学歴が関係あるんだ」
と反発を感じ、なにくそという気で勉強したため、
5年目ですぐに試験をパスして職長になることができました。
地質によって大きく異なった採炭環境
太平洋炭鉱の場合、最初は高さが3メートルもあった坑道が、
ものの3ヶ月もしないうちに1メートルぐらいにまでつぶれてしまい
再び掘り直さなければ機械類が運び出せないといったことは
日常茶飯事でした。
海底まで数百メートル、さらにその上に「海が乗って」いるわけですから、
海底の炭鉱ならばどこも同じだろうと思っていたのですが、
後に研修でたずねた長崎の来島炭鉱を見て驚きました。
ここも太平洋と同じ海底下数百メートルを掘る炭鉱なのですが、
ほとんど上部からの盤圧がないというのです。
当然、仕繰りの作業も比べものにならないほど楽な作業です。
地層や岩盤そのものが固いからなのでしょうが、
同じようでいて、所変われば随分と違うものなのだと感心させられました。
つい、うっかりで持ち込んだ○○○○ 炭鉱の坑内に火気は厳禁です。
石炭と一緒に地層に閉じこめられていたメタンガスが充満しているほか、
掘削によって粉塵となり宙を舞う石炭に引火すれば、
一瞬にしてガス爆発が起こるからです。
一方で炭坑夫にはタバコ好きが大変に多いため、
毎日の入坑時には入念なボディチェックが行われます。
タバコはともかく、ライターの坑内持ち込みを防ぐためです。
わたしもかなりのヘビースモーカーですが、
その頃には部下を200人抱える係長になっていましたし、
他の部署では、隠れて一服やっている強者がいることも知っていましたが、
その危険性も分かっていたため自分の部下には
絶対許さないと常々言い渡していました。
ところがです。
そんな自分がある日、休憩中に何気なく胸ポケットに手をやると、
そこにタバコとライターがしっかり入っているではありませんか。
思わず血の気が引き、全身に冷や汗がドッと吹き出てきました。
朝、家から作業着を着たまま出勤してきたため、取り出し忘れたのです。
そういえばボディチェックの時、係員が胸ポケットのところで手を止め、
怪訝そうな顔でわたしを見つめていたはずです。
わたしはと言えば、そんなこととは思っていないため、
「どうした?」という顔で堂々としていたため、
係員もつい通してしまったのでしょう。
作業が終われば、出坑時にボディチェックなどないのですが、
たまらない罪悪感と申し訳なさ、自分への恥ずかしさから
タバコとライターを誰にも見つからない場所へと隠して持ち出しました。
今でも思い出すと冷や汗の出るような、恥ずかしい思い出です。
| 用 語 |
解 説 |
| 仕繰り |
釧路コールマインでは比較的浅い第5本坑道(海面下322m)を使って採炭しています。この部分には、年間70万トンの生産で、少なくとも5年間程度の採炭可能な炭量があるとみられています。

四方からかかる圧力のため
坑道は次第に低くなっていきます。↓

下盤をさげている、坑道補修の場面 です。
主に切羽周辺の坑道を維持する≪仕繰≫の機械。≪ザルツギッター≫という機械そのものは、昭和48年頃から導入され,坑道を維持する機械として使用されました。↓
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| 坑道 |

固い岩盤には、火薬を使います。
上の写真は、岩盤に火薬を詰め込むための穴をあける機械です。

坑道掘進→坑道を掘り進んでいます。
コンティニアスマイナーで掘削中の場面。 |
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