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「くしろ炭鉱マン物語」 〜我らコールマイナー(炭坑夫)〜炭鉱マンしか知らない、坑内のおもしろ話

●第11回 炭坑近くの農家に生まれて (2006・3・3発行)はこちら>>
●第10回 太平洋炭鉱は自分の誇りであり、人生のすべて (2006・1・30発行)はこちら>>
●第9回 3代続く炭鉱暮らし、祖父は友子の親方(2006・1・1発行)はこちら>>
●第8回 開戦により徴用、筑豊の田川炭鉱へ(2005・12・1発行)はこちら>>
●第7回 炭鉱の町に生まれ、炭鉱の町で成長(2005・10・30発行)はこちら>>
●第6回 機械化が進み、活気に満ちていた時代 (2005・9・30発行)はこちら>>
●第5回 入社から退職まで、36年間を通気一筋 (2005・8・30発行)はこちら>>
●第4回 顔を出すだけのつもりだった太鼓同好会 (2005・7・31発行)はこちら>>
●第3回 地質によって大きく異なった採炭環境(2005・6・30発行)はこちら>>
●第2回 電気担当は、「縁の下の力持ち」(2005・5・30発行)はこちら>>
●第1回 辛く厳しい職場も、今では懐かしい思い出(2005・4・30発行)はこちら>>

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◎第5回 釧路コールマイン 元通気係長 佐藤幸雄さん(56)

入社から退職まで、36年間を通気一筋
わたしが「釧路コールマイン」の全身である太平洋炭鉱に入社したのは
昭和43年のことでした。
まだ道内には夕張や三笠をはじめ、阿寒町の雄別炭鉱まで
ほとんどの炭鉱が創業していた、炭鉱業の盛んな時代でした。
   
入社してすぐに配属されたのが通気係で、
坑内で発生する一酸化炭素やメタンガスなどの濃度を
定期的に測定するガス検定員というのが仕事でした。

海底下数百メートルを掘る太平洋炭鉱に限らず、
本来ならば空気のない地底を掘削する炭鉱マンにとって、
地上から常に強制的に送り込まれる空気はまさに
「命綱」となる重要な部署なのですが、
どうしても生産現場の最前線である「掘進」や「採炭」という
花形部署に比べれば、感謝されこそすれ注目されることの少ない
「縁の下の力持ち」的な、地味な仕事かもしれません。
空気に触れただけで石炭は自然発火

炭鉱の坑内では、常に石炭層から一酸化炭素や
メタンガスといった有毒なガスが発生しています。

一方で、人間が作業を行うためには常に新鮮な空気が必要ですから、
坑内すべての作業現場に新鮮な空気を送り届け、
同時に汚れた空気や有毒ガスを排気し続けなくてはなりません。
ちょうど人間の体内を張り巡っている血管に、
動脈と静脈があるのと同じことでしょう。

ガス検定員の仕事は、それこそ坑内中のいたるところに
ガス検知機や濃度計を設置し、
それらの状態を確認・点検するというのが主な仕事でした。

採炭や掘進といった部署ならば、いったん作業現場に到着したならば
作業が終わるまであまり移動することはありませんが、
当時で百数十キロ、現在でも数十キロはある坑道中の計器や通風ダクトを
点検・調整して回るのですから、毎日十キロ以上は歩きました。

石炭自体は非常に燃えやすい物ですが、
決して空気のない場所で自然に発火することはありません。
しかし、作業する人間のために空気を坑内に送り込むと、
とたんに酸化を始め、熱を持ち始めるという性質があるからです。

ガスの濃度に異常が見つかり、ガスの発生が確認されたなら
すぐに現場に駆けつけ、周囲に何本ものパイプを打ち込んで
「ガス抜き」をするのも私たちの大切な仕事でした。

毎日の天気図から予報までも勉強
空気の出入り口が小さい炭鉱は、予想以上に外気の影響を強く受けます。
湿度の低くなる冬は、外気が乾燥しているため
自然発火の危険性が夏よりも格段に高くなりますし、
低気圧になると坑内の空気がいつも以上に多く排気されるため
地層中のメタンガスが、まるで吸い出されるように発生します。

ガス検定員を13年務めて主任になってからは、こういった異常に
前もって対処したいと考え、毎日の気温や湿度、
気圧配置まで勉強するようになりました。

それでも採炭中の自然発火を防ぐことはほぼ不可能で、
ある時など、休憩しようと坑道の真ん中で腰を下ろしたら
はっきりと分かるほど地面が熱くなっていたことがありました。

普通の自然発火は炭層の表面が30℃を越えただけで放水するのですが、
この時は50℃ぐらいまで温度が上がっており、
本当にぞっとさせられました。
毎日の天気図から予報までも勉強
主任をさらに13年務めてから係長になりましたが、
坑内全体の通気管理を任されるようになると、
一番方〜三番方まで、24時間で操業を行っている現場から
常に異常の報告や対処を求める連絡が入るようになりました。

太平洋炭鉱の時代から、よく技術指導などで中国やベトナムへ
出向いて、現地の作業員に話をさせられましたが
いつでも彼らに一番ウケたのは通気の大切さや難しさより、
私の身長が低いのは、長年の気苦労と重圧で
押しつぶされたからだというジョークでした。

炭鉱ですから陽の当たらないのは当然としても、
さらに縁の下の力持ちである通気担当者の
責任の重さと気苦労の大変さは、万国共通ということでしょうか。

通気:坑内の各所にくまなく新鮮な空気を供給・排出することを通気という。通気施設としては、主要扇風機(坑口に設置し坑内の空気を坑外へ大量に排出する)、局部扇風機及び風管(坑道掘進先に風を送ってメタンガスや発破跡ガス・煙を排除する)、風門などがある。

坑道天盤のガス測定中
ガス検定員